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東京地方裁判所 平成元年(特わ)237号 判決

本店所在地

東京都葛飾区高砂五丁目二九番九号

法人名称

有限会社 原企画

(右代表者代表取締役 原綾子)

本店所在地

東京都葛飾区高砂五丁目二九番九号

法人名称

有限会社 原商事

(右代表者代表取締役 原綾子)

本籍

群馬県伊勢崎市韮塚町四八番地

住居

東京都葛飾区高砂五丁目二九番九号

会社役員

原綾子

昭和九年九月八日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社原企画を罰金五〇〇〇万円に、被告人有限会社原商事を罰金七〇〇万円に、被告人原綾子を懲役二年に処する。

被告人原綾子に対し、この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社原企画(昭和六三年五月三〇日以前の商号は有限会社ニラク、以下被告会社原企画という。)は、東京都葛飾区高砂五丁目二九番九号に本店を置き、遊戯場(パチンコ店)の経営を目的としていた資本金三〇〇万円の有限会社、被告人有限会社原商事(以下被告会社原商事という。)は、東京都葛飾区高砂五丁目二九番九号に本店を置き、遊戯場(パチンコ)の経営等を目的とする資本金五〇〇万円の有限会社、被告人原綾子(以下被告人という。)は、右両被告会社の代表取締役として両被告会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、

第一  被告会社原企画の業務に関し、法人税を免れようと企て、遊戯場の売上の一部を除外し、あるいは株式の売買益を除外する等の方法により、所得を秘匿したうえ、

一  昭和五九年一月一日から昭和五九年一二月三一日までの事業年度における被告会社原企画の実際所得金額が一億五一〇二万七〇六二円あった(別紙1修正損益計算書参照)にもかかわらず、昭和六〇年二月二八日、東京都葛飾区立石六丁目一番三号所在所轄葛飾税務署において、同税務署長に対し、所得金額が零で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成元年押第三九四号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社原企画の右事業年度における正規の法人税額六四三八万七七〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)を免れ

二  昭和六〇年一月一日から昭和六〇年一二月三一日までの事業年度における被告会社原企画の実際所得金額が一億七四三〇万七七〇六円あった(別紙3修正損益計算書参照)にもかかわらず、右法人税の法定納期限である昭和六一年二月二八までに、前記葛飾税務署長に対し、法人税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社原企画の右事業年度における正規の法人税額七四四六万五九〇〇円(別紙4脱税額計算書参照)を免れ

三  昭和六一年一月一日から昭和六一年一二月三一日までの事業年度における被告会社原企画の実際所得金額が一億四四七七万五八一七円あった(別紙5修正損益計算書参照)にもかかわらず、昭和六二年二月二八日、前記葛飾税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一〇三一万五四七〇円でこれに対する法人税額が三四三万二九〇〇円である旨の虚偽の法人税の申告書(平成元年押第三九四号の3、解散申告書と記載)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社原企画の右事業年度における正規の法人税額六一六七万九一〇〇円と右申告税額との差額五八二四万六二〇〇円(別紙6脱税額計算書参照)を免れ

第二  被告会社原商事の業務に関し、法人税を免れようと企て、遊戯場の売上の一部を除外し、株式の売買益を除外する等の方法により所得を秘匿したうえ、昭和六一年五月二六日から昭和六二年四月三〇日までの事業年度における被告会社原商事の実際所得金額が七三三六万五七五二円あった(別紙7修正損益計算書参照)にもかかわらず、昭和六二年六月三〇日、東京都葛飾区立石六丁目一番三号所在所轄葛飾税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二九九万〇六三四円でこれに対する法人税額が八三万八九〇〇円である旨の虚偽の法人税申告書(平成元年押第三九四号の4)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社原商事の右事業年度における正規の法人税額二九七六万五三〇〇円と右申告税額との差額二八九二万六四〇〇円(別紙8脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の目標)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書三通

一  李眞男の検察官に対する供述調書

判示第一の各事実につき

一  収税官吏作成の有限会社ニラクに係る売上高、事業税認定損、控除所得税額の調査書

一  葛飾税務署長作成の被告会社原企画の青色申告承認取消しの証明書

判示第一の一、二の事実につき

一  収税官吏作成の有限会社ニラクに係る手数料の調査書

判示第一の一、三の事実につき

一  収税官吏作成の有限会社ニラクに係る欠損金控除額の調査書

判示第一の一の事実につき

一  押印してある被告会社原企画の昭和五九年度分の法人税確定申告書一袋(平成元年押第三九四号の1)

判示第一の二、三の事実につき

一  収税官吏作成の有限会社ニラクに係る賞与、退職金、雑収入、株式売買益、役員賞与損金不算入額の調査書

判示第一の二の事実につき

一  収税官吏作成の有限会社ニラクに係る期首棚卸高、商品仕入高、期末棚卸高、広告宣伝費、役員報酬、給与手当、厚生費、減価償却費、賃借料、修繕費、事務用品費、消耗品費、水道光熱費、旅費交通費、租税公課、交際接待費、保険料、通信費、諸会費、車両費、雑費、受取利息、受取配当金、現金過不足、支払利息割引料、外路灯分担金償却、保証金償却、固定資産売却益、固定資産売却損、損金算入納税充当金、損金算入附帯税、法人税等充当金の調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書

一  押収してある被告会社原企画の昭和六〇年度分の法人税確定申告書一袋(平成元年押第三九四号の2)

判示第一の三の事実につき

一  押収してある被告会社原企画の昭和六一年度分の法人税解散申告書一袋(平成元年押第三九四号の3)

判示第二の事実につき

一  収税官吏作成の被告会社原商事に係る売上高、給料手当、株式売買益の調査書

一  収税官吏作成の査察官報告書

一  葛飾税務署長作成の被告会社原商事の青色申告承認の取消しの証明書

一  押収してある被告会社原商事の法人税確定申告書一袋(平成元年押第三九四号の4)

(事実認定の補足説明)

判示第一の二の事実につき、検察官は、ほ脱税額計算書上、利子配当等に係る所得税の額二万四九九七円を控除している。しかし、被告会社原企画は、同年分の法定申告納期限内に法人税確定申告書をしていないから、右所得税額は控除できない(法人税法六八条三項)が、被告会社原企画は、昭和六一年三月一日には法人税確定申告書を提出し、同金額の明細を記載しているから、検察官の右取扱は是認できる。右のとおり所得税額を法人税の額から控除する場合には、所得金額算定にあたり、法人税法四〇条により同金額を損金の額に算入しないこととなるが、検察官はその取扱をしていない。そこで、当裁判所は、修正損益計算書上控除所得税額につき貸方の当期増減金額に同額を計上するが、検察官は所得増加の訴因変更をしていないので、訴因調整勘定を設け、借方の当期増減金額に同額を計上することとした。

(法令の適用)

罰条 両被告会社 法人税法一六四条一項、一五九条一項情状により同条二項

被告人 法人税法一五九条一項

刑種の選択 被告人につき懲役刑選択

併合加重 被告会社原企画につき刑法四五条前段、四八条二項

被告人につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の二の罪の刑に加重)

執行猶予 被告人につき刑法二五条一項

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社原企画 罰金六〇〇〇万円 被告会社原商事 罰金八〇〇万円 被告人 懲役二年)

(裁判官 柴田秀樹)

別紙1

修正損益計算書

有限会社原企画

自 昭和59年1月1日

至 昭和59年12月31日

〈省略〉

別紙2

脱税額計算書

有限会社原企画

自 昭和59年1月1日

至 昭和59年12月31日

〈省略〉

別紙3

修正損益計算書

有限会社原企画

自 昭和60年1月1日

至 昭和60年12月31日

〈省略〉

別紙4

脱税額計算書

有限会社原企画

自 昭和60年1月1日

至 昭和60年12月31日

〈省略〉

別紙5

修正損益計算書

有限会社原企画

自 昭和61年1月1日

至 昭和61年12月31日

〈省略〉

別紙6

脱税額計算書

有限会社原企画

自 昭和61年1月1日

至 昭和61年12月31日

〈省略〉

別紙7

修正損益計算書

有限会社原商事

自 昭和61年5月26日

至 昭和62年4月30日

〈省略〉

別紙8

脱税額計算書

有限会社原商事

自 昭和61年5月26日

至 昭和62年4月31日

〈省略〉

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